記事を面白くする工夫についての日記も、今日で最終回です。 

昨日は「ゆらぎ」を意識的につくることで、読者の注意を惹く狙いがある、といいましたけれども、これは、言葉を代えて言えば、読者を軽い不安状態に持っていくことと同義なのですね。 

ゆらぎの手法を使うようになってから大分経って、故・桂枝雀の「サゲの4分類」についての記事を書いたことがあるのですけれども、この記事を書いているときに、このゆらぎの手法は、サゲの4分類と同じ方法なのかもしれないと気づいたんですね。くだんの記事はこれです。 

「緊張の緩和理論」 

「サゲの4分類」には、「あわせ」「離れ」「謎解き」「ドンデン」と4つがありますけれども、日比野庵の記事スタイルは、おそらく「謎解き」にあたるのだと思います。 

つまり、最初に冒頭とその後の文章とのギャップをつくることで、まず、桂枝雀のいう、ホンマ領域から離れ領域にもっていきます。そして、記事の後半部分で、冒頭の引用文を取り上げて、伏線を回収して結論に持っていくことで、あわせ領域で記事が終わる、とこうしたスタイルですね。 

もしこれが、不安から始まって、安心で終わる「謎解き」ではなくて、安心から始まって不安で終わる「ドンデン」で書いてしまうと読者を不快にさせてしまうので、基本的には「ドンデン」では書きません。けれども、無意識のうちに「ドンデン」をしてしまったことがあります。たとえば、この記事です。 

「小泉進次郎議員の質疑について解析する」 

これは、例の戦略の7階層で、小泉進次郎議員の国会質疑を解析していった記事です。冒頭こそ、小泉進次郎議員の質疑の引用から始めて、ギャップを作る「謎解き」で進めていったのですけれども、最後はこんな文章で締めています。 


菅首相は・・・、失礼な言い方だけれど、おそらく世界観の話など期待しても無駄だと思われるので、相手にする必要はないだろう。菅首相には、普通に答弁して貰うだけで、その駄目さ加減は明らかになる。


と、最後に、もう一度、話を「離れ領域」に振って「ドンデン」で終わってしまっていたのですね。書いた当初はそれに気づきませんでしたけれども、あとで、最後の文章で不安になったとの感想をいただいて「しまった」と。(苦笑) 

まぁ、そういうケースもありますけれども、基本は「謎解き」で意図的に"ゆらぎ"を仕込んで、記事に変化をつけると同時に、読者を途中まで軽い不安領域に置くことで、途中の伏線の回収部分まで読み進めさせるという2つの効果を狙っているのです。(そう思っているだけで、あまり効果はないのかなぁ・・・) 

ですから、日比野庵の記事はさらっと書いているようで、実は結構計算していたりするのです。(爆) 

まとめてみますと、日比野庵の記事は、複数のネタを一本に纏めつつ、細部のキーワードにパロディや小ネタを織り込んで、3次元的な記事構造をとり、尚且つ、記事に"ゆらぎ"を仕込みながら、ロジカルに組み立てていくという結構、荒業を駆使した記事だったりするんですね。(爆) 

その意味では、私なりに一番うまく出来たと思っているのは、なんといっても「星界の文証」ですね。 

実は、アニメにもなったSF小説で「星界の紋章」というのがあるのですけれども、題名の「星界の文証」はもちろん、これと掛けています。そして、冒頭が、日蓮の文の引用から始まるくせに、その次がワームホールの説明という、最大級のギャップを作っていて、それらを第3章の「星界の文証」で一気に回収して、結論に至るという構造になっています。 

小説の「星界の紋章」には、超光速航行を可能にするために、通常宇宙空間から「門」を通じて「平面宇宙」という別の宇宙空間を経由して、再び「門」をくぐって通常宇宙空間へと戻るという設定があるのですけれども、これは一種の"ワームホール航法"でもあるんですね。ですから、文中にはわざとらしく「平面宇宙」だとか「ワームホールは時空を飛び越える門」とかいう表現を埋め込んでいるのです。 

極めつけは、「星界の紋章」に出てくる、遺伝子改造によって生まれた架空の種族の名称である"アーヴ"という言葉を使っていることで、"アーヴ"がタイ語で「心地よい満足」という意味であることを知って、これは、ぴったりだ、ということで、この言葉で締めくくっています。 

ということで、この「星界の文証」は、技巧という意味では、自分の中で最高傑作の部類に入ると思っている記事なのです。 

まぁ、でも読んでくださる方には、そこまで気づいていただかなくて結構ですし、単純に読ませるなぁ、とか、面白いなぁとか、情報量が多いなぁ、とだけ思っていただければ、それで十分です。 

日比野庵の記事はよく「中身が濃い」とか「情報量が多い」とか言っていただくことが多いのですけれども、記事の構造を立体的にしていたり、ゆらぎを入れていることも多分に影響していると思うし、それがまた、筆者の狙いでもあるわけです。 

まぁ、日比野庵には、今回ご紹介した文章構成以外にも、まだまだ秘密があったりするんですけれども、それはまた別の機会に・・・。



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